1.国民健康保険の現状

挑み続ける佐久市

国民健康保険の維持には、「他の社会保険との公平性」と「将来をも考えた施策」が大事です。
 
「佐久市の国民健康保険加入者で、現在最も高額給付は、どのくらいか報告して下さい」
 
その日のうちに報告を受けました。
 
1ヶ月約3,000万円…
「ある手術を行われた方です。その方の自己負担額は、3万5,400円です。高額医療費制度がありますので」
 
日本では、国民皆保険制度において、誰もがこういった医療を受けることができます。
 
こんなにも命が大切にされる時代は、洋の東西を問わず歴史を顧みても,なかったのではないでしょうか。
私は、今の日本の命を大切にする姿勢を支持します。
 
しかし一方で、手厚い給付を支える保険制度は、厳しい状況にあることは言うまでもありません。
佐久市では、平成28年度から32年度までの5年間の国保財政健全化計画を立て、収入不足見込額を算出しました。
その額は、19億4千万円(推計)。
そして、平成27年度(実績)を加えると実に22億円の不足となります。
 
そこで緊急的に一般会計から13億1千万円(この金額は、不足額の59%)を繰り入れる計画とし、平成29年度改定の一人当たり国保税の増税を11.1%に留めました。
この一般会計繰入れをしない場合は、18%の増税となってしまいます。
 
国保加入者は低所得者や高齢者が多く、すべてを国保加入者負担という判断はしませんでした。
 
頭が痛いのは、公平性です。
サラリーマンは、社会保険に加入し、独立採算となっています。
独立採算はどの保険も原則であり、国保も同様です。
 
ただし国保は、社会保険等から多額の支援金が交付されています(平成27年度:約30億円)。
一般財源は、市民10万人の貴重な財産です。
その財産から国保会計に助けの手を差し伸べることは、国保加入者からすれば負担軽減になりますが、サラリーマンからすれば二重・三重の負担となるのです。
 
私は、市長として国保審議会に諮問しながら議論を進め、一般会計からの一部繰入れを行い、平成29年度予算編成をしました。
 
反対する方の意見には、低所得者の生活実態を考えれば増税せず全額一般会計からの繰入れを行うべきというものがあります。
その財源には、基金を活用すべきという市民説明会での意見もありました。
 
しかし、もしそのような選択をした時には以下の課題が残されます。
 
①社会保険など他の保険加入者との不公平が拡大する。

②佐久市の高齢化率は29.6%(H28.10.1)だが、今後さらに加速していく。基金活用をした場合は、将来世代の財産まで使うことになる。
 
一方で、給付と負担のバランスが崩れていることは否めません。
その大きな原因は、「人生60年」であった時代の制度を「人生85年」となった今もそのまま使っているという点です。
医療保険制度は国民健康保険法をはじめ、多くの法律等により運用されています。
 
このことから、国政の場において新たな時代にマッチした制度改革を行わなくてはならないのです。
将来のための基金を崩し一般会計から国保会計に繰り入れるという考えは、予算制度や財源の確保、また国民皆保険制度や基金の性格、社会的公平性への知識不足が著しいと言わざるを得ないのです。