市長の資質において、地域の事情を熟知している事は大事な要素です。
平成21年の春。
私は佐久市長に就任しました。
私が掲げた主な公約は3つ。
①佐久総合病院再構築全面支援
②総合文化会館建設の慎重な検討
③徹底した情報公開による市民参加型市政の実現
その他に報道関係からのアンケートもあり、候補者としての発言は、すべて公約…市民との約束となります。
しかし、行政の行う事務事業は700にも及ぶことから、新市長によって方向を変えるべき事業や継続すべき姿勢、あるいはすぐさま決定すべき案件があります。
方向転換を迫られたのは、介護施設の公設民営化です。
それまで、シルバーランドみつい・きしの・結の家などの介護施設について公設民営という手法を選択してきました。「民間が体力も意欲も強めていることから、行政が施設を設置し、民間により運営する公設民営から、民間による施設設置への支援に移行したい」という行政の姿勢の転換を迫られ、私はそれを了承しました。
継続を求められたのは、春日渓谷の道路復旧です。
素晴らしい景色で望月が誇る観光資源です。
しかし大きな課題もあります。
林道鹿曲川線を通行止めにしているが、通行止め区間には危険個所があり、一般車両の安全を確保するためには、道路安全確保等の工事が必要であり、通行止め解除を行うには、約30億円の費用負担が発生する。
しかし残念ながら、「市民要望があっても利益や権利、願望に流されることなく正確に対応して欲しい」と通行止め継続を求められ、私は了承しました。
決定を迫られたのは、岩村田小学校の改築の是非です。地域公約の中で私は、北部小学校(現在の「佐久平浅間小学校」)新設を主張していました。
しかし、「分離新設した場合、岩村田小学校をリフォームに留めるのか全面改築にするのかを決めて下さい!」という声がありました。
概ね小学校の全面改築は50億円です。
基金の状況、他の小中学校の老朽化や住民意識、職員配置など情報を一気に集め即断しなければなりません。
その中で、いくつか残された課題もありましたが、全面改築を決定しました。
その決断に際しては、地域に暮らし、人間関係を知り、地域事情を熟知していなければ正確に判断することができません。
これが選挙で重視される政治・行政の経験の有無なのです。
市長職において地域を知っていることは、欠くことの出来ない重要な資質です。